麻しん-

 麻しん(はしか)は、誰もが一度は通る道といった表現で「はしかのようなもの」と言うように、軽い病気に見られがちです。しかし、麻しんは重症化し、命にかかわる可能性のある疾患です。日本でも、50年前には年間数千人が死亡しており、2000年前後の流行時期には年間20~30名程度が死亡しています。近年では患者数は減少しているものの、2018年3月以降各地で麻しん発生の報告が相次いでおり、2018年は5月23日までで162例報告されています。

・麻しんとは

 麻しんウイルスによる感染症で、10日程度の潜伏期間を経て風邪に似た発熱、眼脂などの症状(カタル期)を認めます。3日程度で一旦解熱後、半日後に再度の発熱と全身の発しんが出現します。3日程度で徐々に症状は軽快しますが、合併症として肺炎、脳炎などを起こす場合もあります。発症した場合特別な治療法はありません。

 麻しんの問題点は、①空気感染すること②特別な治療法が無いこと③まれに重症化すること、この3つです。
①空気感染 手洗いやマスクで感染を予防することができず、同じ部屋やバスなどにいるだけでも感染する可能性があります。接触があり抗体がなければ100%感染します。初期症状が風邪と区別しにくいため、発しんが出た時点では既に周囲に感染させている可能性が高いです。
②治療法 麻しんウイルスに対する特効薬がなく、発症した場合は自然に回復するのを待つしかありません。
③重症化する 重症の肺炎や脳炎を発症することがあり、先進国においても死亡率は1000人に1名程度です。感染者の数万人に1名程度ですが、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)といって、発症後10年程度経ってから重度の障害を発症する場合もあります。現在でも年間数例の発症がみられます。

・感染しないための唯一の策、ワクチン

 麻しんは抗体があれば発症することはありません。抗体は、麻しんに感染するか、麻しんワクチン接種で得ることができます。日本では1978年に麻しんワクチンの1回接種が義務化されましたが、1回では抗体が十分に得られず予防接種していても感染することがありました。1990年以降に生まれた方は2回の接種機会がありました。

・今行うべきこと

 基本的に、2度のワクチンを接種されている方は特に問題ありません。
お子さんには、1歳と6歳ごろのMRワクチン(麻しん風しん混合ワクチン)の接種もれのないようにお願いします。お母さんお父さんで、1990年以前に生まれた方やワクチン接種が2回出来ていない方は、十分な抗体がない可能性がありますので、検査して抗体がなければ追加の予防接種を行うことをお勧めします。一度も予防接種しておらず感染もしていない方は、一刻も早くワクチンを接種してください。接種が間に合わない場合は流行のある地域への移動は避けてください。実際にかかったほうが自然な形で抗体がつくという考え方は誤りです。

・もしかかってしまったら

 風邪症状だけだとしても、麻しんの方との接触がここ1~2週間であった場合は麻しんが疑われます。必ず、あらかじめ医療機関に「麻しんが疑われる方との接触時期、発熱や発しんの症状と発生時期」を連絡してから、病院の指示に従って受診するようにしてください。不用意な移動はさらに感染を広げます。

・今後の見通し

 麻しんは、今回のケース同様、渡航者の感染をきっかけに大流行を繰り返す可能性があります。麻しんに限りませんが、一人でも多くの方がきちんとワクチン接種を行うことで、感染症の流行を防ぐことができます。
ワクチンは自分の体を守るためだけでなく、周囲の皆さまを守るためでもあります。

 

エコチル調査大阪ユニットセンター 小児科医
中山 尋文

参考資料
国立感染症研究所 麻しん https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ma/measles.html

亜急性硬化性全脳炎(SSPE)家族の会 SSPE青空の会 http://sspe.main.jp/

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