妊婦健診と母子健康手帳-

 皆さんはじめまして。エコチル大阪ユニットの柿ヶ野(かきがの)と申します。今回は、産婦人科医の立場から、妊婦健康診査(健診)と母子健康手帳について取り上げたいと思います。

妊娠・出産は病気ではありませんが‥

 まず初めに、妊娠・出産というのは、女性がその体の中で新しい小さな生命を育み、やがて外の世界へと送り出すという、いわば女性の一生の中では最大のイベントの一つです。 妊娠・出産自体は人の生理的な変化であり、病気ではありません。つまり、妊婦さんの診察は、特定の病気かどうかを検査する「検診」ではなく、総合的に健康かどうかを判断する「健診」と呼ばれます。

妊婦健診のはじまりは、欧米の影響を受けて

 日本における、妊婦健診の歴史について、皆さんはご存知でしょうか。昭和の初期までは、妊娠・出産に医者が関与することは極めて例外的で、妊婦さんが医療機関で診察を受けるような健診システムは存在しませんでした。しかし、欧米から健診システムの普及に伴って妊産婦死亡率が減少したことなどが報告され、その重要性が次第に認識されるようになり、日本でも昭和30年代には妊婦健診システムが普及しました。現代でこそ、病院などの医療機関で分娩される妊婦さんが99%を占めていますが、当初は自宅分娩と施設分娩がほぼ半々でした。

母子健康手帳が現在のスタイルになるまで

 続いて、母子健康手帳の歴史についても、簡単にご紹介したいと思います。日本では、戦争中の1942年に、「妊産婦手帳」として設定されたのが始まりで、70 年を超える歴史があります。その当時に普及した背景としては、戦時に活躍できる健康な子どもを増やすのが目的だったようです。その後、1947年に児童福祉法が公布され、1948年には「母子手帳」に改正されました。1965年に母子保健法が公布され、1966年には「母子健康手帳」と改称されて、母子保健事業の変革とともに、幾度も変更が重ねられてきました。

妊婦健診は、母と子の健康管理のチャンス!

 妊婦健診の回数や診察内容は、時代とともに変遷がありますが、最大の目的は、妊婦さんの健康状態に変化がないか、特に、妊娠高血圧症候群(かつて妊娠中毒症と呼ばれていた病気)などの徴候がないかを、早期に発見し、母子ともに健康に過ごせるようにする、ということにあります。最初にも書きましたが、妊娠は病気ではありません。しかし、健康な妊婦さんでも、ある一定の確率で、妊娠特有の病気を起こすことがありますし、また妊娠を機に偶発的に、妊娠とは関係ない病気が発見されることもあります。妊婦健診は、そういった体の変化を、出来る限り早く見つけるための、ある意味「チャンス」なのです。 ですから、妊娠したら、医師に指示される通り、定期的な診察を受けることが、とても大切です。少しでも体に不調があれば、「妊娠のせいだから…」と決めつけず、すぐに医療機関を受診することが、お母さんの生命も子どもの生命も、救うことになるのです。エコチル調査に参加されている皆さんは、その「チャンス」を最大限に活用されている方々と 言えるのではないでしょうか。

母子健康手帳は、母と子をつなぐ大切な記録

 市区町村では、妊娠の届出を受けた時に、母子健康手帳とともに、妊婦健診を公費補助で受けられる受診券を交付しています。帰省や引越の場合にも、市区町村の母子保健担当の保健師に連絡をとって、母子保健サービスの説明を受けて活用してください。母子健康手帳は、表紙の多彩なデザイン性もさることながら、記載内容もとても興味深いものです。 妊娠中の栄養管理のことや、薬の影響についてなど、いいことがたくさん書いてありますので、時間がある時に、読んでみられてはいかがでしょうか。また、お子様の成長や予防接種の記録としても貴重なデータとなりますので、大切に保管しておくようお願いします。 時には、手帳を眺めてお子様の成長を懐かしんだりするのもいいかもしれませんね。

最後に

 厚生労働省のホームページ「すこやかな妊娠と出産のために」(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken10/index.html)も参考になりますので、この機会に是非ご覧になってはいかがでしょうか。

 
エコチル調査大阪ユニットセンター 産婦人科医
柿ヶ野 藍子

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