小児科医からのメッセージ:発熱時の夜間救急外来の受診-

 私は小児科医として12年間夜間救急外来に従事してきました。その経験から夜間救急外来で受診患者数の一番多い発熱について書いてみたいと思います。「熱をはかったら38度あったので受診しました。」というケースが一番多い訴えです。

 ここで保護者の方にアドバイスですが、もちろん救急に受診するわけですからその発熱は数時間以内に発症したものと考えられます。多くは感染症による発熱ですが、ごくごくわずかに免疫の病気でも発熱を初発症状とするものもあります。季節的には今は冬場ですので脱水や熱中症などが起こりにくい時期ですが、このような時にも発熱を来すことがあります。ではお子さんの急な発熱の時にはいつ救急に受診すべきか?です。それはお子さんのその他の症状にもよりますが、年齢、発熱以外に伴う症状が重要です。

 生後3か月時まではお母さんからの免疫を受け継いで基本的には発熱を来す月令ではありません。すぐに救急受診して下さい。医師の判断により採血や検尿を受けることになります。4-6か月時の発熱は受診するかどうか難しい月齢です。それまでお母さんから受け継いでいた免疫力が弱まり、生まれて初めての発熱を来しやすい時期です。多くは風邪や突発性発疹症などですが、数時間経過しても熱が38度を下回らない場合やミルクの飲みが悪い、機嫌が著しく悪い場合は救急受診して医師の診察を受けてください。それ以降から3歳頃まではお子さんのしぐさをじっくりと観察して下さい。水分や食事はいつもより少なくなることが多いですが、一人遊びができている、ご機嫌にしている、テレビなどを見せると喜んで見ている、などの場合はまだ余裕があります。それほど重篤な状態ではないことを示しています。3歳以降になるとある程度自分で言葉を発することができるようになるので、直接本人に体の具合を聞いてみてください。

 それでは発熱以外にどのような症状を伴っていれば受診すべきか?ですが、「けいれん」「意識がない、もしくはもうろうとしていてこちらの問いかけに反応がにぶい」時はすぐに救急受診して下さい。この場合は自家用車ではなく、救急車を利用して下さい。「熱性けいれん」の多くはおよそ20分程度でおさまる、良性のけいれんですが、20分以上長引く場合はけいれん重積といって後に後遺症を残すことがあるため迷わず救急要請して下さい。意識がない、もうろうとしていてこちらの問いかけに反応がにぶいという症状も髄膜炎や脳症などの重篤な疾患がかくれていることがあるため救急要請して下さい。

 その他にも、例えばあやしても泣き止まない(この時はあわてず、まず電気をつける、お気に入りの曲やテレビを流してみる、戸外へ出てみる、これで泣き止むようであれば多くは問題ないですが・・・)、嘔吐を複数回繰り返している、激しく咳き込む、激しく腹痛を訴える、下痢の回数が多い、血便を伴っている場合も、救急要請は必要なくとも、救急受診して下さい。

 これからはインフルエンザシーズンにも入ります。インフルエンザは場合によっては熱性けいれんの原因になったり、脳症などを引き起こしたり、家族内感染を起こす厄介なウイルスです。今や一般的になったインフルエンザウイルス検査。多くの診療所で言われた経験をお持ちの方がいらっしゃるかと思いますが、インフルエンザ発症後すぐはウイルス量が少なく、検査しても陽性にならないため半日ほどまって受診して下さいということをいわれたことはないでしょうか?この検査は陽性とでれば間違いなくインフルエンザですが、陰性と判定が出ても翌日再検査で陽性と出ることがあるやっかいな検査です。

 おうちの方の中にはちょうど15時間たったのでインフルエンザかどうか調べてほしい、とすやすや眠っているお子さんを朝6時に受診させるというケースも多く見受けられます。一刻も早く診断、治療を受けたいというおうちの方の気持ちも十分わかります。でも翌日の診療所は8時半から受け付けが始まります。その2時間半の間に急変したらどうするのか?とおしかりを受けることもありますが、お子さんに、そしておかあさんにも病状、また気持ちにも余裕があればもう少し寝かせて朝一番に受診しようか、という気持ちをもつことも大切です。とはいうもののお子さんの発熱は心配ですね。特にインフルエンザは重篤な合併症をごくまれに発症することがあるためことさらです。心配で仕方ないのをがまんして朝まで待つ必要はありません。またお子さんが喘息やその他の慢性疾患をお持ちであったり、家族内に高齢者の方が一緒にお住いの場合はその方になるべくうつさないよう救急受診して頂いて、検査を受けるべきタイミングか、時間が経過していなくても検査をしておいたほうがよいか医師と相談して下さい。

P.S. 冷えピタ
 救急外来でもよく発熱を来しているお子さんが額や場合によってはわきの下などにはって受診されるケースをよく目にしますが、これは熱を下げる効果は全くありません。お子さんが「きもちいいなぁー」という表情、しぐさをしていればはってあげてください。お子さんの中にははられることで不快に感じ、逆に機嫌が更に悪くなることがあります。そのような場合は全くはる必要はありません。あと、乳児にはる場合には特に気を付けてください。乳児はまだ手で払いのける動作がうまくできません。額にはったはずの冷えピタが万が一鼻と口をふさぐようなことがあれば窒息の恐れがあります。私個人的には乳児には冷えピタは全くはる必要はないと考えています。熱を下げる効果はまったくないのに加え、窒息の恐れ、かぶれの心配があるからです。

 
大阪ユニットセンター 小児科
三浦 弘司

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