小児科医からのメッセージ~保育所症候群とは-

 「保育所症候群」、そのような医学用語がある訳ではありませんが、保育所に行き始めの子供たちが集団生活の中で立て続けに色々な感染症にかかってしまい、病院通いが絶えない状態のことをこのようにいうことができるかと思います。子供が元気よく保育所に通ってくれる時は、親としても家庭生活と仕事のリズムをある程度保てるので大きな問題にはなりませんが、一旦子供が熱を出してしまうとそのリズムは大きく崩れてしまいます。日頃から帰宅後に手洗いなどの習慣を身に付けたり、予防接種を受けさせて感染を未然に防ぐということは大切なことではありますが、保育所などで小さい子供が密集して集団生活を送る以上はある程度仕方のない現象だと思います。


 「ご存じの方もいらっしゃると思いますが、小児の発熱のほとんどはウイルス感染症です。発熱当日から受診しても抗生剤を飲まなくてもいいですよといわれたご経験があるかと思います。もちろん発熱初期からウイルス性ではなく細菌性が疑われる場合には、医師の判断で抗生剤を処方することもありますが、私自身も積極的に細菌感染が疑われない以上は抗生剤を処方することなく翌日により詳しく検査をしてもらえる近隣の開業医さんや病院に受診してもらうようにお話しています。急な発熱で保育所に呼び出されて迎えにいった時でも、自宅に帰ってから機嫌よく遊んでいるといったように、ある程度本人に余裕のあるような時はあわてて救急に連れていくことはせず、翌日の仕事のことを悩みながらとりあえず自宅でゆっくりさせてあげるのが一番だと思います。早く治したいという思いのあまり救急や病院へ頻繁に通院してしまい、また新たな感染症をもらい逆に長引いてしまっているお子さんを診察することも時々あります。

 「我が家にも2歳の娘がいます。母親の職場復帰のため生後間もなくから保育所に行き始めています。初めの半年はまさに保育所症候群、鼻水や咳は当たり前、発熱やら胃腸炎やら1か月に最低2回は調子が悪くなることを繰り返していました。保育所に預けて仕事をようやく始めたと思ったら、「お子さんお熱が出てきたのでお迎えお願いします」とか、夕方仕事を終えてお迎えに行ったら「鼻水や咳がひどくなっていましたよ」などといわれることもよくあることです。

 「小児救急に勤務しているとそのようなお子さんが保育所の帰りに連れてこられることがしばしばあります。中には明日までに熱を下げたいので抗生剤を処方してほしいとおっしゃる親御さんもいらっしゃいます。私の家庭でも自分の子供の急な発熱などの時には翌日の仕事をどうするかということで夫婦間で揉めることがしばしばあります。

 「このように書かせて頂きましたが、我が家でも子供が調子を悪くしたときには心配になるものです。保護者のみなさん、そして子供たち、寒くて体調の崩しやすい時期が近づいていますが、がんばりましょう!インフルエンザのワクチンももうそろそろ始まります。保育園児には積極的に受けさせて下さい。

 
エコチル大阪ユニットセンター 小児科
三浦 弘司

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